公共トイレ/公園・景観施設
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産業情報 やまがた 1999年1・2月号 株式会社クラフト 代表取締役社長 武田 元裕『環境視点 』

共生、共存のために

 とうとう本当の意味での世紀末を迎えた。しかし21世紀へ向けた地球の姿は、バラ色とは言い難い。新世紀に明るい展望が開けるか否かは、現在生きている私たちの生き方にかかってくるといっても過言ではないだろう。

地球誕生以来、46億年。気の遠くなるような長い時間をかけて育まれてきた、かけがえのない地球。そこに生きる私達はその中のごく微小な点でしかない。劇的とも言える発展をもたらしたこの20世紀に、私達はもしかすると取り返しのつかないことをしてしまったのかもしれない。人間は自らの利便性を追及するあまり、それによって犠牲にされてきたものの存在に気づかずにいた。新世紀を目前にした今、潜在化していたその存在がいかに大きなものであったかを思い知らされている。地球の変動は、私達に多くのことを知らせているのだ。

こうした視点に立つと、これからの私達の活動が、今までのように経済最優先であって良いはずがないことに気付く。地球に生きる一人一人が、環境保全を念頭に置いた生き方をする必要があるだろう。宇宙船地球号は21世紀に向け、大きく舵を切るのである。経済活動をする私達もそうした自覚をもって仕事に取り組むことが必要になってくる。

大量生産、大量消費、大量廃棄の時代は終わった。良いものを長く、循環させて使えるものづくりをする。製造工程で有害なものが発生した場合は、安全に処理する。そうしたことを地道に積み重ねていくことが大切だ。企業にもモラルが求められている。自分だけがよければいい時代は終わったのである。単なる利益だけを追求するのではなく、社会的意義のある仕事に取り組みたいと思っている。

各地に景観、環境施設を納めるという立場から、保全に配慮したものづくりを推めてきた。その中でもとりわけトイレは環境に与える影響が大きい。そうした観点で、公共トイレに力を入れるようになったのは15年程前である。その頃は、人間にとっての機能性や快適性を重視したものづくりをしていた。バブル期になって百花繚乱の時代に入った頃は、自然景観に配慮した共生型の施設づくりを指標とした。同時に環境に対する配慮を重視施策とし、現在に至っている。現在は水洗トイレが万能と思われているが、果たしてそうだろうか。

自然エネルギー(太陽光、風力、雨水、沢水)を動力として利用すること、汚水を浄化し再利用するシステムを併用すること、汚れたものを自然界に排水せず、自己完結型システムにすることなどに、現在取り組んでいる。私達は地方の小さな一企業であるが、出来ることから始めたいと思う。

大気汚染による地球温暖化や、工場排水、生活排水、廃棄物の不法投棄などによる水質汚染は現在とどまることを知らない。それらは、高度成長における快適性享受のツケとも言えるものである。その負荷を背負いながら、次代に良い環境を引き継いでいくことはたやすいことではない。私達生産活動に携わる企業の努力なしに達成できるものではないことを、心にとどめておきたい。ごく一部の人間だけが快適に暮らす次代は終わり、地球上の全ての生物と共生、共存できることが21世紀に与えられた課題ではないだろうか。