公共トイレ/公園・景観施設
設計・製造・販売

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MYTOWN マイタウンあさひ 2004年12月号
公共トイレデザイナー 結城玲子さん 流されないで立ち向かう人

トイレをデザインする

「飲み水にも事欠いている国があるのに、日本の家庭のトイレは洗浄に使う水が飲料水と同じ。何て贅沢な国なんでしょう!」と目を丸くする結城玲子さん。彼女の仕事は、公共トイレのデザイン
結城さんが今推し進めているのが、自然環境保全型のトイレ。洗浄水をバクテリアによって分解浄化し循環利用するというもの。節水にもなるし、処理水を放流しないから環境に与える影響もないと一石二鳥のトイレだ。

10年前、初めてのデザインで

初めは、公園施設の企画・製造を請け負う夫の仕事をサポートするつもりで、子供が寝た後に図面をひく手伝いを始めたのがきっかけだった。公共トイレの図面を書いている時、「これで使い勝手がいいのかしら?」。自分なら納得のいかないデザインに、「今度トイレの仕事がきたら、企画から私にやらせてみて」。
そうして手掛けた初めてのデザインが「全国グッドトイレ10」を受賞。10年前のことだ。その後数々の賞を受賞し、気がつけば育児・家事の合間に始めた仕事が、いつしかライフワークになった。デザイン設計室・室長。「お昼時間の直前に『し尿を使った実験』を社員に頼むこともあるのだから鬼だよねぇ!」と笑顔で言う。

トイレの日

11月10日、「トイレの日」に東京で開催された<トイレシンポジウム>に出席してきたという結城さんは、「最近は公共トイレの重要性があらゆる場所で理解されてきている。社会の中でも大切な整備項目の1つと考えられるようになってきた。ここまでの道のりも長いものでした・・・・・・」。そんな感慨も長年、公共トイレについて関わってきた結城さんならでは。
かつて山形の公共トイレの実情を調査しシンポジウムでの発表経験も持つ結城さんは、その経験を活かし「ユニバーサルデザイン研究会」といNPOの活動もしている。<ユニバーサルデザイン>とは「いろいろな人が快適に生きる社会をつくること」を定義としている。この活動を通じて行政との対話も増え、出前講座も依頼されるようになってきた。「以前は行政主導型のイメージが強かったけど、最近は住民参加型が増えてきた。時代が少しずつ変わりつつあると感じる」。

一本気な性分で

<行政側と話し合いの最中に「そんなことを思っているのはあなただけ」と言われ、「そんなことない」と署名活動を始めた>。
こんなエピソードに象徴されるように、とことんやらなきゃ気が済まない。その性格が災いしたのか去年、過労で倒れた。駆けつけた息子に「何でそこまでやるの?その性格直しなさい」と言われた。「でも、直らないのよねぇ。自分の仕事が地域に役立つことが、私にとって次への原動力であり、生きる力」と結城さん。「けれどこうして、家族の理解や会社の人や友人の支えがあってこそ、仕事が続けられる」。

10年前、結城さんが初めて受賞したトイレがある公園に行った。
日中は営業マンや配達員が、昼下がりはおしゃべりに興じる主婦たちが、午後は学校帰りの子どもたちが、そのトイレを使う。「私もたまにお世話になるよ。最近のトイレ、昔に比べたらきれいになったよねぇ」と主婦が言った。
何気ないこんな言葉が、彼女の仕事への原動力だ。