公共トイレ/公園・景観施設
設計・製造・販売

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河北新報 2000/03/10
『伸び盛り エコビジネス 山のトイレに懸念 』

 人間の行く所、排泄物は必ず出る。登山客の増加に伴うし尿の問題は各地で深刻化している。ほぼ「たれ流し」状態の山岳地のトイレ。水源地に近い場所では、下流への影響も懸念される。そうした問題を解決しようと、クラフトはその場で汚物を分解し、排水しないシステムの「循環型」トイレを開発した。
クラフトは、コンクリート加工から、公園設備を手がけるようになり、20年ほど前に公共トイレの製造販売を始めた。その後、街中のトイレだけではなく、河川敷や山岳地、海浜といった電気も排水設備もない場所にも公共トイレが求められるようになった。その需要に応じて開発したのが「循環型」トイレである。
「循環型」はその名の通り、汚水を排出せずに浄化して繰り返し利用するシステム。地中の浄化槽でバクテリアを活性化して汚物を分解し、浄化した水をくみ上げて洗浄水として利用する。バクテリアの活性化や洗浄水くみ上げに使う電力を確保するため、ソーラーパネルによる発電システムを採用したところもある。

約30棟の施工実績

この方式で、水質汚染度合を示すBOD(生物化学的酸素要求量)値は5ppm程度まで浄化できる。これまで、全国で約30棟の施工実績がある。
昨年秋に山形県・朝日連峰の大朝日山頂避難小屋に設置された同社製のトイレは、「全国でも初めて」という新しいシステムだ。
便そう内の汚物はバクテリアの働きで液化されて土壌処理部に流れ込み、土中バクテリアによってゆっくり分解される。雨水程度の10ppmに浄化された水が貯水槽にたまり、洗浄水として再利用。そのくみ上げは、便器のわきの足踏みポンプで行われる。
便そうには、月に1回程度酵素を投入して分解を促進。分解できなトイレットペーパーは、特設のボックスで分別回収し、焼却処理をする。1日120回の使用に対応できる。

水洗も見直す必要

 このシステムは7,8日に開かれた日本トイレ協会の「山のトイレ事例報告会」で紹介され、先進事例として注目を集めた。
「雪が解け、本格的な登山シーズンを迎えるこれからどうなるかが問題。無事稼動しているかどうか、見に行かねば」と武田元裕社長。
循環型トイレに力を入れてきた武田社長は、一般の水洗トイレを見直す必要を感じるという。「汚いものが目の前からなくなってしまえば、後は知らないでは済まされない。汚水を下流へと流す下水道の問題も、これでいいのかと思う。」
トイレという製品を通して、次世代につけを回すことのない循環型システムの在り方を、さらに模索していくという。

ゆうき れいこ

 山形市生まれ。環境・景観施設の設計製作会社「クラフト」取締役デザイン設計室長。手がけた作品は通産省グッドデザインなど多数受賞。山形市内の若手建築家らと市内の古い建造物を守る活動も。96年には、山形市に景観条例の制定を求める署名活動を展開した。中高生3人の母。44歳。

*お詫び

 インタビューの中で「富士山」と表現されておりますが、発言者のミスで、「早池峰山」の誤りでした。お詫びして訂正致します。